コラム 「罪と罰 ソーニャ」

「ソーニャ」

ソーニャは極貧家庭に住む18歳の少女だった。

実の親であるマルメラードフは、失業してアルコール中毒である。

継母であるカテリーナは、神経症で情緒不安定である。

三人の幼い弟妹を抱える一家は、家賃も滞納して路上に追い出される寸前であった。

継母は、生活費を稼ぐためにソーニャに売春するよう強要する。

「そんなに惜しいものかい、宝ものじゃあるまいし」

感情を乱した継母に、こう罵られた彼女は、

一家にたったひとつのプラトーク(ネッカチーフ)を被り、その夜、街に出かける。

そして、自分のからだと引き換えに、30ルーブル(3万円)を稼ぎ、継母に渡した。

 

 

継母も申し訳なく思い、一晩中ソーニャの足にキスして、自分の非情を詫びた。

底抜けにやさしいソーニャのこころの拠り所は

聖書を読み、祈りを捧げ、キリスト教の信仰を守ることだった。

 

 

ある日、彼女の父親は泥酔して馬車に轢かれてしまう。

父親の顔見知りだったラスコーリニコフという貧しい青年が、

偶然にも事故現場に居合わせ、死にかけた彼を、家まで運んできてくれた。

血まみれの父は、臨終の場に、派手な姿で駆けつけたソーニャに謝りながら息絶える。

 

 

ちょうどそのとき、自ら犯した強盗殺人によって、神を見失い、

自殺か自首かで悩んでいたラスコーリニコフは、ソーニャの存在に関心を持つ。

 

ソーニャの部屋で、彼女に新約聖書の『ラザロの復活』を読み上げさせ

自殺してもおかしくない境遇でも耐え抜いている彼女の信仰の強さに、目を見張る。

 

彼はソーニャの親友、リザヴェータを、

たまたま強盗現場で殺害してしまったことを告白する。

 

驚いたソーニャは、彼に自首して罪を償うことをすすめた。

ソーニャの厳しい眼差しを見守られながら、

彼は、十字路にひざまずいてキスをして、「わたしは人殺しです」と懺悔し、

そのまま警察署に自首する。

 

ソーニャは、一家の恩人である彼を、シベリア刑務所まで追いかけた。

信仰に救いを見出したふたりは、新たな人生を歩みはじめるのだった。

 

(終わり)

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