コラム 「罪と罰 マルメラードフ」

家のあり金をすべて握りしめ、仕事を無断欠勤して、

野宿してホームレス同然だったマルメラードフは、

居酒屋で、偶然にも話の分かりそうな青年と目が合う。

その青年、ラスコーリニコフに出会い、彼は虫の知らせを感じたように

突然、相席して身の上話をはじめる。

それは、結核の妻とお腹をすかせた幼子たちとの貧困生活ぶりと

自分の実の娘であるソーニャを売春婦にしてまった己の卑劣についてである。

 

彼は、誰にも理解されない苦しみから逃れるかのように饒舌だった。

マルメラードフは、神を信じていることを語る。

彼は、世界の終わりの日が訪れ、最後の審判のために

死んだ自分が、この世に戻ったときのことを想像しているという。

 

まずは、売春婦になったソーニャが許されると彼は語る。

売春は罪だが、肺病や実の継母と、飢えた弟妹、のんだくれの自分を助けるために

売春したのだから許してくださるはずだと、彼は信じている。

 

《生前おまえ(ソーニャ)はたくさん人々に愛の心を捧げたから、

お前のたくさんの罪は許されるであろう……》

そして彼もまた、同様に神に許されると信じている。

《これらのものどもをむかえるのは、これらの誰一人として

自分にその資格があると考えていないからじゃ……》

《みんな目が覚める……カテリーナ・イワーノヴナも……やはり目が覚める

主よ、汝の王国の来たらんことよ》

マルメラードフの恥しらずな妄想を、居酒屋の客たちは口々にののしった。

 

彼は、愛する妻、カテリーナに目を覚ましてほしかったが、

最後の審判のその日に、まず、神に許されなければ

カテリーナは自分を許してくれないとことを知っていた。

 

彼の予感どおり馬車に轢かれて、家に担ぎ込まれたとき

カテリーナは、彼が許しを請うことさえ、拒んだのだった。

 

マルメラードフは、売春婦の仕事着で現れたソーニャの膝の上で

自分の卑劣を渾身の力で、詫びた。

 

さげすまれ、ふみにじられて生きているにもかかわらず

娘は父を許したのだった。

 

マルメラードフは娘のやさしさの中で息を引き取った。

(終わり)

 

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